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CBS

#事業承継

#地方企業

#経営者

#家族の反応

小野 琢也さん

株式会社タンゲ製作所
取締役プロダクトマネージャー

Point

異業界から、地方企業の事業承継者を目指すことになった小野さん。自社の経営、地域が抱える問題など、様々な課題感やCBSでの学びについて伺いました。

teacher

Interviewer

島貫 智行教授

事業承継にあたり、経営を学び直したいとCBSへ

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島貫

小野さんは転職されて今の会社に入られたんですね。今のお仕事と転職された経緯をお聞かせください。

小野

茨城県の日立の企業城下町にある金属プレス加工を生業としている20人ほどの企業で、営業、財務や経理、人事といった幅広い業務を担当しています。実は社長が義理の父でして、娘2人で跡継ぎがいないため、社長の代で会社をたたむという話が出ていたんです。しかし、世界的に見ても他にはないコアな技術を持っている会社なので、ここでやめてしまうのはもったいない。その強みをもっと伸ばしていけるのではと考え、自分が継ぐと決意して2015年に入社しました。

島貫

それまでは違う仕事を?

小野

まったく畑違いです。前職は化学メーカーで人事や購買を担当しており、海外の現地法人に駐在していたこともあります。今の会社に入って間もなく10年ですが、最初はフォークリフトを運転したり、プレス機を動かしたりといった現場仕事もしていました。今は現場メインの仕事では無くなりましたが、毎日製造現場には顔を出すようにしています。

島貫

ビジネススクールで学ぼうと思った理由は何だったんですか?

小野

2018年に役員に就任して4年経ち、これから事業承継に取り組むタイミングで、経営についてちゃんと学び直したいと考えました。MBA取得を考えていると義父に相談したところ、「現場のことがある程度わかった段階で、経営について学び直すのは良いことだ」と快諾してもらいました。

島貫

CBSはどのように知ったんですか。他校と比べたりは?

小野

実は、CBSしか受けてないんです。国内でMBAを取れるビジネススクールをネットで検索すると、どうしても平日の夜間にスクーリングがあったり、終日拘束でみっちりやったりするところが多い。地方在住なのでオンラインで受講できるところしか選択肢がないと思って探し、CBSに辿り着きました。ただ、CBSは土日に対面授業があることも魅力でしたね。仕事でも直接顔を突き合わせることの重要性を認識していただけに、学友と同じ空間で学ぶ機会があることもCBSに決めた理由です。

島貫

対面とオンラインを組み合わせて、それを平日と休日で明確に分けているのがCBSの特徴ですよね。入学前に体験会にも参加されたんですね。いかがでしたか。

小野

CBSに興味を持って、詳しく調べたのがちょうど11月の出願受付の直前で、その時にMBA体験会の参加者を募集していたので、すぐに申込みました。マーケティングのグループワークをオンラインで体験したことで、オンライン講義の不安も払拭されて、そのまますぐに願書を出しました。本当にタイミングがよく、不思議な縁のようなものを感じました。

島貫

ビジネススクールに通うことに、ご家族の反応はどうでした?

小野

職人気質で試行錯誤しながら会社経営を続けてきた義父は、「俺がまだいるうちに学ぶのはいいじゃないか」とあっさり送り出してくれました。「自分は目の届く規模までしか大きくすることができない。今以上に会社を大きくすることは考えてもみなかった」と言ってましたが、自分が築き上げてきた会社を託してくれたのかな、という気がしています。 妻と3歳から中2までの5人の子供には「週末、パパいなくなるけど」と話したところ、みんな理解し、後押ししてくれました。家族と過ごす時間がどうしても減ってしまうので、宿題をやっている子供たちと肩を並べて課題をやるなど、意識して一緒の時間を過ごすようにしていました。家事と育児で支えてもらった妻には頭が上がりません。本当に家族には感謝しかないです。

島貫

お子さんと一緒に勉強しながら、お父さんが頑張ってる姿を見せられるってすごくいいですね。

自分の小さなアクションが会社を変える

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島貫

大学の時とビジネススクールでは、だいぶ違いはありましたか。

小野

全然違いますね。私は法学部で大学院まで進学したので、今回で2度目の修士号を取得したことになるのですが、いちばん違うのは実践が伴っているかどうかという点ですね。以前は判例を読んだり論文を書いたりしても、実社会でリアルに起こっているということを意識する機会は少なかったです。 CBSでは、みんな何かしらの課題感や悩みを持ってきているので、そもそもスタート地点が違います。私自身、経営者の端くれとして仕事をしていく中で、地元の狭いエリアでのビジネスのやり方に少し閉塞感を感じていました。そうした課題感を持ってCBSで学び、学んだことを会社に持ち帰り、試行錯誤して実践してみる。また翌週の講義でその結果をみんなで共有してディスカッションし、さらに新たな気づきを得るという、まさにアクション&リフレクションしながらブラッシュアップすることができました。こうした学びは学部時代や以前の大学院時代にはなかったことでしたね。

島貫

具体的に、どんなアクション&リフレクションをしましたか。

小野

例えば『戦略と組織』で、何か行動を少しでも変えてみるという授業がありまして、講義で対話の重要性や心理的安全性の話を聞いたあと、お昼ごはんを従業員と一緒に食べるようにしてみたんです。すると、彼らが普段感じていることや不満など率直な声を聞くことができた。それ以前は業務に関する内容以外はあまり従業員と話す機会がなかったんですが、ああそういうことを思っていたんだと改めて対話の大切さに気付きました。それ以降、従業員全員で毎月ミーティングを持つようにしました。

島貫

その結果、何か変化はありました?

小野

ミーティングするようになってから、対話のサイクルが生まれ、従業員同士の会話も増えたように思います。プレスと金型と設計といった違う部署の人間が横断的に話をする場面が多く見られるようになりましたね。自分の小さなアクションから、組織が少しずつ変わっていって、半年から一年ほどの間に会社が良くなってきたなと手応えを感じています。

島貫

リーダーの立場として、社員の不満を受け止めるのはけっこうタフな仕事ですよね。

小野

一人ひとりが思っていることに対して100%は返せないですが、話を聞き、リアクションすることで彼らのフラストレーションが軽減されるのかなと。確かにタフな仕事ですが、それで組織が良くなり、みんながいきいきと働けるようになればいいなと思います。

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組織も地域も変えるチェンジリーダーを目指したい

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島貫

CBSでの友人や教員との関係やネットワークについてはいかがでしたか。

小野

20代から60代まで幅広い年代で、製造業からサービス業、大企業から中小企業まで多様な業種の人が集まって、地に足ついたディスカッションができるのがCBSのいいところですね。また、先生方も学生に対して敬意を持って接してくださるので、オープンな議論ができ、学びやすい距離感がとてもよかったです。

島貫

小野さんのように事業承継を期待されている方もいれば、マネージャークラスの方など、業種も役職も様々ですよね。そうした多様性の良さを実感した場面はありますか。

小野

多様な人が自由にディスカッションをすることで、創造性が生まれると思います。例えば、『チームビルディングとリーダーシップ』という授業で「10年先のCBSのビジョンを劇で表現する」という課題があり、みんなでCBSのビジョンについて意見やアイデアを持ち寄るんですが、私も含め全然おもしろくないんですよ。ところが、お互いを理解していくうちに「学生の時にチアリーダーやってたからダンスできます」とか、「バンドやってたんで楽器できます」と自分の強みの話になり、最終的に歌って踊って演奏して、というCBSでしか絶対にありえないような発表になりました。思っていたよりも、とてもいいものができたなと感じましたね。

島貫

それはおもしろいですね。

小野

自分の今までの価値観をひっくり返してもらった授業だったので、とても印象に残っています。多様な人材が集まって、心理的安全性が担保された集団の中で、自分の強みを活かし、一つのものを作り上げていくというクリエイティブな体験ができました。

島貫

ビジネススクールというと、分析とかロジカルな部分が強調されがちですが、創造性を学ぶ授業もCBSの魅力の一つだと思います。そんな学びの中でどんな気付きがありましたか。

小野

最初は戦略に力を入れたいと思っていて、人的資源管理への意識は希薄だったなと思います。しかし、マーケティングやファイナンス、経営法務を含む5分野を学んでいくと、経営者として総合的に考えていかないとだめだと感じました。戦略と人を結びつけて考えるということは全くやってこなかったなと。それが先ほどの話につながるのですが、従業員と対話することで、自分たち経営者の考えが本当に伝わっているかということを改めて見直すきっかけになりました。

島貫

経営戦略と組織戦略、人材戦略を連動させる重要性に気付いたということでしょうか。

小野

おっしゃる通りです。入学前は、経営という面であまり従業員のことを意識していなかったのですが、会社を伸ばすには技術だけでなく、組織づくりや人づくりが大切だと気付かされました。また、授業やリフレクションセミナーを通して、自己のありたい姿を見つめなおし、CBSでの学びを組織はもちろん、地域社会に還元したいと考えるようになりました。

島貫

経営者として視野が広がった感じですね。

小野

自分軸が広がり、価値観が大きく変化したことも2年間の学びから得た大きな収穫ですね。働いている従業員が良くなれば、会社も私も良くなる。会社が良くなれば、地場の他の会社さんに仕事を出せて、地域が良くなる。日立地区は人口も減少し、廃業する企業も少なくない地域です。会社を良くしていくことで、従業員や地域のみんなに明日はもうちょっとよくなるかな、と思ってもらえるようになればいいですね。以前の自分と比べ、そこが大きな変化だと思っています。

島貫

CBSのミッションであるチェンジリーダーとしての成長経験につながったのですね。最後に、これからの夢や展望があればお聞かせください。

小野

まずは事業承継をしっかり進めていきたいです。会社の存続が、社員の生活を守り、税金を納め、外注企業やお客様へ貢献するという良い連鎖を生みます。私はCBSで、ものの考え方や取り組み方が変わりました。ここで得た学びを活かし、周囲に還元し、組織も社会も変えられるチェンジリーダーを目指していきたいですね。地方都市の衰退が指摘されて久しいですが、明日がもっと良くなると思えるような地域社会づくりに自社の経営を通じて貢献したいと考えています。

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