第一三共株式会社
グループ長
製薬会社での研究開発に携わりながら、ビジネスプランを学ぶ。その根底にはどんな思いや課題意識があったのでしょうか。そして今後、どのようなビジョンを描いているのか伺いました。
Interviewer
新藤先生
新藤
真嶋さんは東京理科大学の薬学部のご出身ですよね。今はどんな仕事に携わっているんですか?
真嶋
新薬を開発するための臨床試験や承認申請などに関わっています。キャリアとしては20年になりますが、最初は低分子医薬品の開発をしており、そこから抗体医薬品にシフトして今は抗がん剤の開発に携わっています。
新藤
薬の開発のお仕事をしていて、なぜビジネスを学ぼうと思いましたか?
真嶋
2018年に昇進試験を受けた際、ビジネスや経営に関する勉強をするなかで興味が湧き、深く学んでみたいと思い始めました。しかし、MBAが必須だとは感じていなかったので、当初はビジネススクールに通うことは考えていなかったです。
新藤
そこからビジネススクールへ通うことを決意したのには、何かきっかけがあったのですか?
真嶋
社内で毎朝Microsoft Teamsを使い、企業文化や読んだ本のことなどをモヤっと話すというラジオ番組を始めた方がいまして。その方の話を聞いているうちに、企業文化やリーダーシップなど自分の中でモヤモヤしていたものをきちんと学びたいと思い始めました。
新藤
いろいろなビジネススクールがありますが、CBSに決めた理由は何だったのでしょうか?
真嶋
理論だけでなく目の前の実務への適用方法も学べると感じたこと、CBSの年齢構成が自分の年齢と一致していたこと、授業と仕事が両立しやすそうだったことなど、いくつかの視点から総合的に判断しました。また模擬講義の印象が、パンフレットから感じていたイメージと変わらなかった点もポイントでした。
新藤
ネームバリューなどではなく?
真嶋
はい。大学院を選ぶ基準を、ネームバリューでなく自分の人生とのつながりという価値観を軸にしていました。実は、個人的に中央大学とのつながりが多かったことも理由の一つです。私は鳥取県出身なんですが、上京してから知り合った中学・高校の大先輩の弁護士の先生が中央大学出身だったんです。そこから仕事外で中央大出身の方とのつながりが増え、私の人生に中央大とご縁があると感じました。
新藤
面白いご縁ですね。実際に入学してみて、どのような印象でしたか。
真嶋
MBAを目指している方たちは、もっと肩肘張っていると想像していましたが、実際には違いました。
新藤
相手を論破するみたいなイメージ?(笑)
真嶋
ええ、もっと主張が強いのかなと思っていましたが、良い意味で予想外でした。役職や世代が近い人が多く、すぐ仲良くなれました。
新藤
同じようなポジションや経験を持つ人が集まっているから、課題意識や同じような悩みを共有して理解し合えるというメリットがありますね。
真嶋
そうですね。日本の社会の中で成長してきた企業にいる人たちは、海外のMBAとは課題意識が違うと思います。第一三共はグローバル企業ですが、“日本という土台を活かしたグローバル化”が課題だと考えています。CBSの仲間も似たような課題意識を持っていて、すぐに理解し合えましたね。
新藤
特に印象に残っている講義はありますか。
真嶋
必修科目のリーダーシップ・コアです。この講義では「各参加者が気付きを共有すると集団全体が成長し、またそれがフィードバックされて各自の学びも深まる」ということを、理論と実践を通して学びました。
新藤
リーダーシップ・コアは座学ですが、グループワークなどもあるのですか。
真嶋
グループワークは多かったですね。CBSの仲間は全員がリーダーシップ・コアを受講しているので、そこでお互いの価値観の違いを知り認め合ったことで、他の講義でのディスカッションや学生生活での対話が深まり、学びの深さにつながったと感じています。
新藤
お互いの価値観を理解しながら、学びの質を上げているという感じでしょうか。
真嶋
自分としてはそう感じています。そしてそれぞれが抱える課題や問題意識などを聞くことは、自身の仕事で新しいチャレンジをする動機づけにもなりましたし、仕事の進め方の選択肢が広がりました。まだ理解できていないところも多いですが、リーダーシップや企業文化などでモヤモヤしていた部分に一本の軸ができたように感じています。
新藤
真嶋さんはビジネスプランニング(現科目名:アントレプレナーシップとビジネスプランニング)を受講されていましたが、当時必修ではなかったビジネスプランを学ぼうと思った理由は何だったんですか?
真嶋
ある先輩がビジネスプランニングを受講して、具体的にビジネスをまとめた話を聞いたことがきっかけでした。2年生になる時点で社会課題を解決するビジネスをしたいと考えていた矢先、その先輩からお話を聞き、一度自分のアイデアをビジネスプランとしてまとめてみようと思いました。
新藤
どのようなアイデアを持っていたんですか?
真嶋
私が考えていたテーマが、定年退職を迎える60歳前後の人材の活用という社会課題でした。ヘルスケアビジネス、高齢社会ビジネス、ヘルスケア行政論などを学ぶ一方で、丹沢先生のプラットフォームビジネスというものを学び、これはおもしろいなと。プラットフォームができれば、自分がすべてを取り仕切らなくても自然とビジネスが回っていく。こういうアイデアや理論を組み合わせていけば、社会課題を解決する仕組みを世の中に提供できるのではないかと感じました。
新藤
何か形になりそうだと?
真嶋
でも、どう作ればいいか分からない。そこで、ビジネスプランを学ぶことで、授業が終わった時に何か形になるのではないかと考えたわけです。
新藤
なるほど。受講してみて、何か気付きはありましたか。
真嶋
授業を受けていて感じていたのは、点と点がつながり面になっていくということです。一つの講義から学ぶ範囲が広がると、その学びが他の講義の内容と重なっていることに気付き、社会課題とその背景、解決に向けたアプローチなどが面のようにつながって学びの範囲を広げることができました。
新藤
最終的に、課題研究(事業計画書)を提出されていますが、プロジェクト研究(ゼミ)を通じてビジネスプランをどのようにブラッシュアップしていったんですか?
真嶋
プロジェクト研究では、自身の決めたテーマに集中して取り組めますし、ゼミの先生や仲間との議論を通じてアイデアの具現化や、競合の分析、自社の強みの明確化、資金面の精査など詰めが甘かった部分を掘り下げていきました。実は、入学当初は所属組織のイノベーションの源泉について研究しようと思っていたので、自分でもマインドの変化に驚きました。
新藤
CBSで学ぶうちに考え方が変わってきて、一緒に考える仲間もでき、課題意識も新たに浮かんで来て、その解決策のコアも見えてきた。さらにビジネスプランニングで柱ができ、さらにそれを突き詰めていったという感じでしょうか。
真嶋
そうですね。入学前は想像もしなかった方向まで新しい学びが広がり、そして実務にも活かせています。CBSで視野が広がって課題意識を持ったからこそ、今の仕事の大事さを実感しました。自分のなかにいろいろな選択肢があることで、目の前の現業への取り組み方が強くなったとも思います。
新藤
結果的に、CBSでの学びは期待通りでした?
真嶋
期待以上でした!金銭的な負担はもちろん、仕事やプライベートで時間的な負担が大きくなることも心配だったのですが、それ以上に得たものは大きかったです。
新藤
CBSに入る前と今では、仕事での変化はありますか?
真嶋
仕事は同じですが、在学中にマネジメント職になりました。
新藤
すばらしいですね!
真嶋
先ほどちょっとお話したように、第一三共は日本発の企業として、日本を活かした上でのグローバル化を目指しています。国や地域が違えば特徴もそれぞれ異なるわけで、日本社会で生活している人は海外とは違うユニークさを持っていますが、それをうまく活かせていない日本企業が多いように感じています。その根底には、日本の社会構造の中で育まれた人材の価値観やマインドセットがあり、そこを理解しないと本当の意味でのグローバル化の課題は解決しない。そういうことを学べたのがCBSでした。
新藤
CBSで学んだことで、仕事で活かせていることはありますか。
真嶋
先日、弊社にHaaS(Healthcare as a Service)という部署が立ち上がりました。HaaSが目指すのは「健康で豊かな生活を実現する=社会課題の解決」という視点なので、そうなると薬が唯一のソリューションではなくなってしまうんですね。創薬に留まらず、いろいろな形で健康や生活のしやすさに関する課題を解決するという発想になった時に、ビジネスプランニングを素養としてみんなが持っていることが大切なのではと感じています。
新藤
そのためにも様々なリソースを活用して、成功例を作っていくことが大事かもしれませんね。最後に、今後の目標や夢があれば教えてください。
真嶋
まずは第一三共が持っている薬の種を世界の患者さんにしっかりと届けられる体制を作ることが、社会課題の解決につながると思っています。CBSで、今の仕事を通じて社会課題を解決できることを改めて理解したので、まずは目の前の仕事でベストを尽くしていきたいですね。
一方で、CBSでの学びを通じて、多様な社会課題や、それらの解決につながる学問としての理論や新しいアイデアも知ることができました。そのために自分ができること、興味を持ってリソースを割けるものがあれば、何らかのかたちで貢献したいと思っています。
新藤
今後の更なるご活躍を期待しています。今日はありがとうございました。