株式会社カラビナ / 代表取締役
CBSには企業に勤める人だけではなく、経営者も学生として在籍しています。
戸部さんは、7人の社員を抱える企業を経営する経営者。クライアント企業のブランディングを担当するため、経営者と対話をする機会も豊富です。
ただ、CBSの入学前は「知ってるつもり」でも実はよく理解していなかった経営分野や用語もあったそうです。
社員から頼りにされ、家庭もある立場として、学ぶ時間をどのように捻出したのでしょう。そしてCBSで学んだことをどのように経営に役立て、これからどんな夢に向かって行くのでしょうか。
Interviewer
松下先生
松下
戸部さんはご自身で起業をされた経営者ですよね。
どのような事業をしているんですか?
戸部
企業のブランディングをサポートする会社を経営しています。社員は7人です。
起業する前の経歴からお話ししますと、もともとはリクルートに在籍していました。リクルートでは、企業の新卒採用のブランディングを行っていました。
クライアント企業から経営課題を聞き取り、言語化されていない競争優位性を探して業界におけるポジションを探り、そのポジションの獲得に必要な人材を絞り込む。そして、最後にクリエィティブとして定着させていく、という仕事を10年間していました。
松下
マーケティングの発想が必要な業務ですね。
戸部
そうですね。ただ、マス・マーケティングの典型的な方法を使うというよりは、対話をしながら、肌感覚で企業の価値観やを探って、そこに合う人材を探っていくという感じです。
なので、クリエイティブな側面と、コンサルティングの要素が含まれた特殊な仕事でした。多様な業種にわたって、経営者から現場の若手社員まで、さまざまな方と接する機会があって楽しかったです。
松下
10年間お勤めされた後、すぐに起業されたのですか?
戸部
リクルートが分社化されたことをきっかけに退職し、その後は、フリーランスとしてコピーライターの仕事を始めました。
10年ほど、リクルートの外部クリエイティブ・ディレクターとして、社員たちと一緒にクライアントを獲得するために働きました。
松下
起業されたきっかけは何だったんですか?
戸部
2012年くらいにDXが登場したりして、BtoCの広告市場が縮小していくなかで、クリエイティブの領域がなくなっていくのはもったいないと感じていたんです。
そこで自分がやってきた、「企業の経営理解をしてクリエイティブで翻訳する」という特殊な仕事の知見を生かして、BtoBで組織の中に未来志向、デザインシンキングなどのクリエイティブの視点を使っていけば、組織活性に貢献できるのではないかと考え、2012年に会社を作りました。
松下
起業された後、なぜビジネススクールに通おうと思ったんですか?
戸部
実はフリーランス時代から勉強したいとは思っていたんです。大学時代も心理学専攻だったので、経営や経済にはそんなに明るくないんですね。
本や新聞などは日頃から読んでいましたが、経営者と話をしていても、単語の意味はなんとなくわかっても、深いところまでは理解できていないなと感じることもありました。
それに起業した後は、なんとか黒字で経営していても、思ったほど売り上げが伸びなかった。
松下
「確実にわかっていなくても、何とかなればいい」と考えているビジネス・パーソンって、多いと思うんです。
なぜ、戸部さんは、ちゃんと理解したいと思ったんですか?
戸部
やっぱり深いところで理解していないと、いい提案もできないですから。
100%とはいかなくても、クライアントが抱える課題についてできる限り理解しておけば、考えの背景が解釈できるので、適切な提案ができると考えました。
松下
数あるビジネススクールの中で、なぜCBSを選んだのですか?
戸部
実はCBSで学ぶ前に、別の学校で1年間在籍していました。それなりに学びはありましたが、動画の授業を受けて、ディスカッションもメールで、という形式だったので一方通行な印象を受けました。その学校で、CBSの先生も教えていて偶然CBSのことを知りました。
CBS は授業の内容のバランスが良さそうな印象でしたし、近所だから通いやすいことも決め手となりました。あとはMBA取得というベーシックで確かな方法で学べば、自分がわかっていない場所が特定できて、そこを理解することで仕事の提案の裏づけにもなるという期待もありました。
松下
CBSに通ってみて、良かったところは?
戸部
たくさんありますが一番の良さは、CBSでは双方向の学びが得られたということですね。一方通行であると、どうも知識を詰め込まれている印象があって、本当にわかっているのかな?と感じることもあります。
CBSでは知識が得られるだけでなく、実践している「本物」の先生が教えてくれるので、対話をしながら自分のこととして、きちんと理解できるんですよね。
松下
CBSへの入学について、ご家族や社員の方の反応はいかがでしたか?
戸部
夫や大学生の娘は賛成してくれました。高齢の母はあまり賛成ではなかったですが、強い声ではなかったし、そもそも私は人の意見を気にしないので。
一番反対だったのは社員です。「これから平日の3日間、夕方からいなくなるから」って言ったら「えー!」って(笑)。
提案や資料作りについて、私がチェックをしていた部分がなくなるので、心配だったようです。でも長い目で見ればそのほうが社員たちの自立になるし、お互いに日中の時間を有効活用するためにもいいことだと思いました。
松下
社員に「ハードルを越えられる」と信じてあげることは大切ですよね。
戸部
一度放り出されたほうが、自分で考えるようになると思います。
松下
戸部さんにとっても、社員の方々にとってもストレッチが必要な時期だった。
戸部
そう思います。
数年前にビジネススクールを調べたときは「2年間通うのは大変なんだろうな」と諦めていたんです。でも今回はあまり年を取りすぎると余計に大変だから‥と覚悟を決めました。
松下
通い始めてみて、社員の方への影響はいかがでしたか?
戸部
いい刺激を受けてくれています。
講義で作った資料を見せながら、学んだことを教えると、楽しんで聞いてくれていますね。目の前の業務にあたるだけでなく、俯瞰的にアカデミックに見ることに興味を持ってくれています。
松下
社員の方にもぜひCBSで学んでいただきたいですね(笑)。
戸部
まずは単科コース(注:CBSには1科目2ヶ月からスタートできる単科コースがある)を受けさせたいですね。その後、自分でも本格的に学びたいと思ってくれたらいいのですが。
松下
CBSに入学して、楽しく勉強できましたか?
戸部
想像以上に面白かったです。講義も楽しくて。
ビジネスで経験を積んできた分、その必要性への認識が高く、吸収しやすいとも感じました。
松下
仕事を終えた後で学ぶのは、大変だったのでは?
戸部
むしろリフレッシュできました。扱うテーマはいつも違いますし、仕事を題材にした謎解きをしている感じで、仕事とは視点をずらして思考することで、気分が切り替わって。
松下
同期とのコミュニケーションは、どうでしたか?
戸部
いい意味で、大学の学部時代に近い関係を、先生や同期や先輩とも築けた印象です。仲間もでき、彼らとの意見交換を通して教わることも本当に多かったです。
外部のビジネスコンテストにも出ました。出るつもりはなかったんですが、偶然、学校に残っているときに、一緒にやる人を探している人と目が合ってしまって(笑)。
結果として、仲間との絆が強くなった感じですね。授業も、学生生活も楽しかったので無理せず続けられたと思います。
松下
学んだことは、実務に活きていますか?
戸部
もともと組織活性化やインターナル・ブランディングをサポートする事業を行っています。その提案にアカデミックな裏付けができるようになりました。
授業中に課題解決のヒントがみつかったり、授業で学んだ考え方を、次の提案に盛り込んだりすることもよくあります。
さらにCBSで知り合った方と連携してのビジネスも広がっています。
松下
とくに役に立ったと感じるのは、どの授業でしたか。
戸部
多々ありますが、直接役立っていると感じるのは、露木先生(注:戦略分野の専任教員、露木恵美子教授)の講義です。
授業では「組織文化」にスポットを当てていました。リクルート時代の採用の仕事でも「組織文化を見ろ」と伝授されていたので、大手と違って差別化しにくいような小さな会社を担当した時は、玄関のスリッパの置き方や、傘立ての様子などを見て、その会社の文化を感じ取ることで、企業としての価値観をつかんだりしてきたんです。
教わった知識をあてはめることで、そんなふうに自分が実際やってきたことを言語化できるようになり、多くの人により提案を伝えやすくなりました。
松下
言葉でしっかり表現できることは大事ですよね。
組織に提案をするときには、多くの人たちに賛同してもらう必要がありますからね。
戸部
はい。なので教わった内容をどんどん、企画書などにも盛り込んでいます。
先日も、先生に教わったスキームを提案書に入れてクライアントに説明したら、いい方向に進んでいます。
松下
CBSでの学びが、実践に使えるものだとわかっていただけてうれしいですね。
戸部さんは、修了後の勉強を続けているのですか?
戸部
もともと露木先生のプロジェクト研究(注:大学の演習(ゼミ)に似た少人数の講義)で、リクルートの組織文化の研究をしていたので、その後もその続きに取り組んでいるところです。その延長でプロジェクト研究に出たり、授業のサポートをしたり。
松下
リクルートのことを知っている戸部さんと、露木先生の学者としての専門性をまぜながら、学び合っている感じですね。
戸部
ディスカッションを通して、先生の人柄が伝わってくるのも楽しいです。自分がやっていることが体系化できる喜びもあります。
なので、これからももっと学んでいきたいですね。クリエイティブの仕事でも、どんな仕事でも、論理的な要素がないと広がっていかないので、そこをとことん学べるCBSの生きた授業は本当におすすめです。
松下
今後も学びをより深めて、新しいステージに登っていただければ!
今日はありがとうございました。